やっと出会えた。
以前から気になっていたビール、「東京ブルース」。
連休の最終日、福生の石川酒造まで出向いて、
いよいよ名前負けしていないか確認する時がやってきた。
敷地内のレストランや蕎麦処はすでに満員御礼。
かまわない、このビールに会うためだけにやってきたんだから。
売店で購入し、テーブルや椅子が置かれている木陰のガーデンへ。
シュポン。
オレンジの甘い香り。
一口飲むとその香りとは裏腹なドシンとした重み。
喉にフェイドアウトしていくグレープフルーツのような苦味。
「東京ブルース」の名にふさわしい。
あぁ、わざわざ醸造元まで来ただけのことはある。
なぜか誰も来ない静かな木陰のガーデンで味わう「東京ブルース」は
まるで今まで歩いて来た人生を反芻するかのような五感で味わえるビールだった。
さて、精神を思い切り開放し、満足して出口に向かうと「個展」の文字が目に飛び込んできた。
酒瓶が転がっている絵画のフライヤー。
あぁ、きっと絵を観たらもっと精神が喜ぶに違いない。
階段を上るとwoodyな建物はさすが酒造の蔵らしい。
ひと目で福生とわかる大ぶりの絵。
母子をテーマにした絵、裸婦、童話の挿絵、静物画、デッサン画・・
順々に堪能していると
製作者である画家の大山瞳さんとお話することができた。
飲み物やお菓子まで用意されていて
蔵に流れる音楽、絵画、照明、かすかな絵の具の匂い・・
五感をフル稼働させながらここでもまた精神が開放されていくのを感じることができた。
この個展を訪れたのはきっと「意味のある偶然」。
さてさて、大山瞳さんの個展ではお土産に素敵な作品のポストカードまでいただいて、
駅までの大きな幹線道路16号沿いを歩き始める。
ダンプがバンバン走るこの道には商店と思しきものはない。
と思ったらこれが摩訶不思議なお店が店先の商品に隠れるように1軒だけたたずんでいた。
上を見上げると「HAPPY COMPANY」とかかれている。
普通だったらきっちりと閉められた戸を開ける勇気が起きないような店構えだ。
それでも何か妖気のような、いや陽気だろうか、
なにかの気を感じておそるおそるドアを開ける。
意外にも中から店主の「いらっしゃいませ」ではなく「こんにちは、こんにちは!」の
明るい声に出迎えられる。
小菅村の村営住宅18,000円の物件に住むというスキンヘッドのこのご主人、
いつもは夜7時に店を開けるというのにこの日はたまたま5時に店を開けていた。
古着とアクセサリー、雑貨を扱うこのお店、なんと夜7時から夜中の3時までの営業という。
「なぜ夜?」の問いかけに「夜眠れない人のために」の答え。
あぁ、やっぱり。
私の五感は、いや六感は正しく作動していた。
通りすがりの冷やかし客である私に
旧知の知人であるかのようによもやま話をしてくれたこのご主人のお店のドアを開けたのも
私にとって「意味のある偶然」。
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