里は葉桜となる頃、最後の桜、そして桜の最期を観るために近くの山へ。
日頃の運動不足を呪いながら、あえぎあえぎ山を登り見晴台にへたり込むと、
人の気配のまったく無い山はプッと耳が詰まるほどの静寂に包まれていました。
緑深い山のところどころに混ざる桜が淡い霞のよう。
思考を停止してだらしなくポカンと開けた口から吐き出した魂が
尾根を伝って山の中に吸い込まれてゆきます。
日常にまみれて汚れて歪んだ魂が、
春の霞の中をさまよって、桜の刹那の精気を浴びてまた私の身体に戻ってくる頃
静寂な山にひらひらと音が聞こえたような気がしました。
桜の最期に間に合った。
ほんの数日だけの花霞。
人間が100年生きたとしたって宇宙から見れば
桜の花びら一枚散る時間にも値しないほどの刹那。
その刹那にできること。
桜のように、雨上がりの虹のように
儚く消えてゆくものがその瞬間に放つもの。
このちっぽけであさましい人間にもそんな瞬間を迎えることができるでしょうか。
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